<樽の種類 その2> malt blog より (04.5.20up)   <その1>


●ホグスヘッド

その1でバーボン樽が多く使われると書きましたが、実はバーボン樽をそのままモルトウイスキーの熟成に使うケースはそれほど多くないようです。というのはバレル(バーボン樽)は180リットルとやや小さいため、熟成が早く進んでしまうのです。そこでバレルを一度ばらばらにして組みなおしたホグスヘッド(豚の頭という意味だそうです)という樽を用いるのが一般的です。

でも私が想像するに熟成が早くなるというのは表向きの理由で、おそらくはアメリカから輸入するときにばらして運ぶ(あくまで想像ですが樽のままだと空気を運ぶようなものなので)というのと、樽が小さいと保管効率が悪い(小さな樽を並べるより、大きい樽のほうが同じスペースで多くの量を保管できる)というのが本当の理由だろうと思います。

シェリー樽のホグスヘッドもたまにありますが一般的ではありません(スペインは隣国なので輸送コストはあまり問題にならない?)。したがってホグスヘッド樽熟成のモルトもオーク樽としてバーボン樽とひとくくりにされることが多いようです。むしろ一口にオーク樽という場合はホグスヘッドのことをさしていると考えていいかも知れません。

私の個人的な見解ですが、250から300リットルが容量のホグスヘッド樽で20年前後熟成されたモルトが一番シングルモルトらしさ・魅力を味あわせてくれると思っています。


バーボン樽、シェリー樽、ホグスヘッドの3種類以外の樽がモルトウイスキーの熟成に使われることも多くなっていますので、ざっとまとめておきます。

なお、シェリー・フィニッシュ、ポート・フィニッシュのような表記をよく見かけますが、これは他の樽で寝かせてあったモルトを、半年から2年程度違う樽に詰め替えた場合の表現です。ある意味で手軽に違う風味のモルトを造り出せるということで、最近よく使われるようになった手法です。

●新樽
その1でも書きましたが、まれにリユースでない樽で熟成されることもあります。スコットランドではほとんど使われないようですが、先に書いたサントリー(ミズナラ)以外でもニッカが新樽と明記されたシングルカスクウイスキーを発売しています。木材の種類は書かれていませんが、おそらくアメリカンオークかと思われます。新樽で熟成されたウイスキーはやはり樽材からの抽出物の影響が感じられます。

●ポート樽
ポルトガルで作られるポートワインの空樽もしばしば使われます。ポートワインはシェリーと同じくワインにブランデーなどの蒸留アルコールを添加し発酵を止めて作られる、酒精強化ワインの一種です。同様なものではマルサラ(イタリア、シチリア島)やマディラ(ポルトガル、マディラ島)の樽が使われることもあり、これらの樽がウイスキーに与える影響はシェリー樽と似ています。

●ワイン樽
少し前にボウモア・クラレットが話題になりました。クラレットはボルドーワイン(フランス)を指す言葉です。私も飲みましたが明らかにワインの影響が感じられ、空樽に詰めただけでこんなに影響がでるものかと驚きました。他にもグレンモーレンジが出していますが、かなり高いので手が出ません。白ワイン樽を使ったグレンマーレイもあります。

●ラム樽
ラムはさとうきびから作られる蒸留酒で中米やアフリカなどで作られています。ラム樽熟成のウイスキーは私も3回ぐらいしか飲んだことがありませんので、こんな個性がでるというように書くことはできません。

●ブランデー樽
これはまれにしか見られませんが、コニャックアルマニャック(いずれもフランス)の樽で熟成したものもあるようです(私も1回しか飲んだことがありません)。また、カルヴァドス(フランス産の林檎からつくるブランデー)樽で熟成したモルトも最近よく見かけますが、まだ私は飲む機会に恵まれていません。