Connoisseures Club -- Dec. 2004 --

CLOSED DISTILLERIES OF HIGHLAND

 

2004年12月度 コニサーズクラブ
テーマ:ハイランドの閉鎖蒸留所
2004年12月26日 Stand Bar

テイスティングノート  山崎 白秋 記

 今月のお題は、「ハイランドの閉鎖蒸留所」である、もう2度と出会うことが無いかもしれない、冬を彩る素敵なモルトたちであった。

 いつもメンバーのなかでは、「閉鎖蒸留所は閉鎖になる理由があるね」とのつぶやきにうなずきあっているのであるが、それはモルトのできが平凡すぎるとか、ライトでドライであり味わいに特徴がないことが多いのである。 もちろん、インバネスやローランドでは蒸留するには街中すぎる環境になったという理由もあるのだが。 ところがである、前回のビッグネームの裏返しではないが、きわめて出来がよいのである。サイレントと聞くまでは、5本ともビッグネームであろう、と思っていたメンバーが多いのではないか。

 特にインバネスの3蒸留所は惜しまれて閉鎖された感が強い。グレンモール蒸留所なんかは私のお気に入りでもある。 今回のテイスティングを終えてサイレントと聞き、NO.5は特にうまかったのでグレンモールとのメモを記してある。

スコッチ文化研究所名古屋支部第16回例会

1.ブラッカダー バンフ 24年 1976 53.7%

2.SMWS No.62.9 グレンロッキー 23年 1979 56.1%

3.SMWS No.87.5 ミルバーン 15年 1983 56.4%

4.キングスバリー・ケルティック グレンアルビン 34年 1967 51.3%

5.SMWS No.57.13 グレンモール 21年 1981 62.5%

さて、本題の5本を紹介しよう。

***[NO.1] バンフ  ブラッカダー   1976-2001 24年  53.7%  ***

(香り)きわめてフルーティ、上質のエステル香。有機溶剤を感じさせる熟成香。甘い香りにひかれる。 奥にはかすかなピート香。酸味もほどほどありバランスが取れている。

(味)ほどよい酸味、ミィデアムボディ、味の数が多いがドライとも感じる。やや硬い味であり、ピート由来のいがいが感がある。アルコールの刺激はいっさいない。

強い印象はないが、すべてがバランスしてうまいモルトである。


***[NO.2] グレンロッキー SMWS  62.9  25年   56.1%  ***

(香り)香りの立ちが遅い。軽くピートを感じる。しばらくすると軽く爽やかなフルーツを感じる。もも、梨の香り。 甘い香りとやや煙い印象。トースティーな麦芽風味。

(味)若さを感じる、あえてたとえれば焼酎である。ドライであり、単調で味の数が少ない。

どうも熟成がうまくいっていない印象である。


***[NO.3] ミルバーン   SMWS  87.5  15年   56.4%  ***

(香り)ヌカくさい、ひねた香り。土くさくもある。軽いピート香。最初はマイナスなイメージであるが、しだいに酸味とフルーティーさが立ってくる。バニラ香も心地よい。香りはきわめて複雑である。ミディアムボディ。 変幻自在でインプレッシブなモルトといえよう。

(味)やはりひねて、土くさい。ドライでからい、しょっぱくもあり、海辺で貯蔵されたことを連想させる。やや古い樽の印象。

***[NO.4] グレンアルビン キングスバリー ケルテック  1967   34年   51.3%  ***

(香り)ややこげた、こうばしい香り。甘い熟成香と濃いエステル香。しかし酸味でほどよくバランスしている。 ラム樽、あるいはワイン樽を連想させる香り。ブドウの香りも強い。 きわめて濃厚な香りで、いくらでも香りが沸いてきそうである。

(味)ポート樽熟成をイメージする。酸味もほどよい。こってりとした味で、しょっぱさ、ひね香など複雑にからみあった味である。さらに赤ワイン、ラムの味も感じられる。

上品な長期熟成とは違った、どろくさく不器用で無骨なモルトである。

***[NO.5] グレンモール  SMWS  57.13  21年   62.5%  ***

(香り)トップノートはフルーティー、ももや梨の香りが心地よい。熟成由来のエステル香もほどよく立ってくる。甘い香りも奥に感じられ、香り奥からたくさん出てくる。 軽いピート香。しばらくするとバニラ香も強く出てくる。

(味) アルコールが強い、かなりドライでからい。いがいがとした印象、しばらくするとブドウを思わせるフルーツを強く感じる。

 


コニサーズクラブBBSより

★<タイトル>閉鎖された蒸留所のモルトは美味しくない?  投稿者/惹樽(管理人)  投稿日/2004年12月31日(金)17時14分

モルト会の翌日にぎっくり腰をやり、しばらくへたばっていました。

さて、今月のモルト会のテーマはハイランドの閉鎖蒸留所、しかも施設がすでに取り壊され復活の可能性がないところばかりです。

調べてみると、ミルバーンだけが85年、残る4箇所は83年、ほぼ同時期に閉鎖されています。また、3〜5はどれもインバネスにあった蒸留所です。

バンフは良くできたハイランドモルトの典型と言っていいのでは?熟成感のある華やかなトップノート、優しい味わいのなかにかすかなピートを感じ、アフターも爽やか。買って初めて飲んだときに出来のよさに驚いたことを思い出しました。

ロッキーは香りの立ちが悪く、味もぴりぴりと刺激が強い。熟成年数のわりには落ち着いた印象がなく、なんだか不良中年みたい。

ミルバーンは最初に漬け物様のひね香を感じたが、一瞬若いモルトかと思ったがどうも少し違うように思えた。やがて香りにフルーツが出て麦わらも感じるようになった。

アルビンの見た目は赤く、バーガンディーワインを連想させた。ラベルの表示はシェリーホグスヘッドだが、シェリーの影響はややゴムを感じる味以外にはない。ぶどうの風味を感じたのでワイン樽熟成といわれても信じただろう。ややこがした味わいで非常にドライ。とても個性的なモルトで皆の評価が分かれたけど、私は面白いと思いました。

グレンモールは1.のバンフを凝縮したような印象。ボディもしっかりしていて、これは上出来のモルトだと思う。ゴールデンカラーというか魅惑的なブラウンの色合いが魅力的だが、その期待に恥じない。

ロッキー以外はそれぞれ個性もあり閉鎖されたのは惜しいと思えたのですが、皆さんはどう思いましたか?出来のよいものが集まったということもあるでしょうが、皮肉なことに出てきた意見も先月のビッグネーム、ハイランドパークと対照的でしたね。

▼投稿者/ 博雅堂主人  投稿日/2005年01月01日(土)17時57分

>モルト会の翌日にぎっくり腰をやり、

・・・ それは災難でしたね。惹樽さんにも加齢現象が忍び寄っていますね。

>皮肉なことに出てきた意見も先月のビッグネーム、ハイランドパークと対照的でしたね。

全く線を画したように最初から賛美する言葉が出ていましたね。これがブラインドの良い所なんでしょうね。自分も一番目のバンフが出た時点で「これは美味しい!」というセリフが思わず出たくらい。

全般に良いできのモルトが出品されたと思いますが、全てが二十年ほど前に閉鎖された蒸留所で、何故これ程美味しいモルトを作っていた所が閉鎖になってしまうの?と思ってしまいますが、ここの所が熟成するのに時間がかかり、世界の需要と製造量のバランスの見通しが難しいビジネスだからなんでしょうか?十二年後に酒に対する世界の需要の方向がどうなっているかを見極めるのは本当に難しいことでしょう。

聞く所によると日本のウィスキーメーカーも、ハードリカーに対する需要が落ち込んでいるために、モルトがだぶつき、何年もモルトの仕込みを中止しているとのことです。今までのストックで、百年は賄える程の在庫量とも聞きました。

山崎、白州、御殿場、軽井沢も閉鎖蒸留所になってしまうの?

我々モルト好きの人口などは巨大メーカーからすれば微々たる存在なんでしょう。好き者はいつの時代にも少数派なんでしょうね。

しかし、万が一世の中にSingle malt大好き人間が増えて安売り酒ショップにボトラーズ・モルトがずらり並ぶ状態になったとしたら、好き者は又々別のマイナーな嗜好品にターゲットを移すことでしょう。

今年も細々としたメンバーで表、裏の作法で楽しみましょう!